健康

【安全?危険?】無痛分娩が欧米でだけ流行る理由

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たぬきんぐですじゃ。

 

最近無痛分娩のニュースを見るようになりました。

京都の産婦人科医院で3件もの重大事故があったことが最近ニュースで話題になりました。「無痛分娩はとても危ない」というイメージを持たれている方は多いと思います。

 

一方で欧米ではもはや無痛分娩が主流で、出産の8割ほどは無痛分娩だと言われています。

今回はわかりやすく説明するため、無痛分娩についてもっと知りたい方は日本産科麻酔学会で詳しい話が読めます。

無痛分娩とは何なのか

硬膜外麻酔の図

最近は権利関係にうるさいので、図は自作しました。

(絵心なくて申し訳ないですじゃ・・・。)

 

無痛分娩の中では、硬膜外麻酔という方法が主流です。上の図のように背骨と背骨の間から針を刺して、硬膜外腔というところにチューブを入れます。

そこから薬を入れて神経を麻痺させて痛みを取るという方法です。硬膜外麻酔はおなかの手術等、様々な手術で使われる一般的な方法です。

欧米ではこの方法が主流で、特に死亡率を上げるようなデータはないようです。緊急帝王切開にスムーズに移行できるというメリットや持病のある妊婦さんにとって負担が少ないなどのメリットも言われています。

硬膜外麻酔による合併症が起こる可能性があることがデメリットと言えるでしょう。また、麻酔が子の発達に悪影響を及ぼさないとする論文はあります(Flick et al. Anesth Analg. 2011 Jun;112(6):1424-31 Neuraxial labor analgesia for vaginal delivery and its effects on childhood learning disabilities. )

ので、現状では子への危険性は低いと考えられます。

 

針が進みすぎてくも膜下腔に入ってしまうと、脊椎麻酔になってしまいます。脊椎麻酔自体は下半身の手術でよく使われる麻酔方法です。しかし硬膜外麻酔と脊椎麻酔では薬の効き方が全然違うので、同じ量入れると脊椎麻酔では効きすぎてしまいます。

一般的には硬膜外麻酔では脊椎麻酔になっていないかどうかテストを行い確認したり、薬の効き方をチェックしながら投与していくので事故が起こる可能性が低いですが、チェックを怠ったり薬の効きを確認せずに現場を立ち去ることは事故の可能性を上げます。

病院

ニュースになった事故を予想します

もちろん現場にはいなかったのでニュースの文章から解説する形になります。「ふるき産婦人科 無痛分娩」で検索するといっぱい出てきました。

 

まず、硬膜外麻酔は麻酔科医ではなく産科医自ら行いました。そして処置終了後別の場所におり、麻酔の経過は確認していなかったようです。

 

麻酔は上で説明した「脊椎麻酔」の状態になっていたと考えられます。チューブの位置が深くなりすぎ、「硬膜外」ではなく「くも膜下腔」に薬が入ります。

この場合薬が効きすぎるため、お腹~胸~頭と、上のほうに向かってどんどん麻酔が効いてきます。お腹がしびれていたくないだけではなく、呼吸する筋肉などがしびれてしまうわけです。このため呼吸困難になります。

近くにスタッフがいれば呼吸困難になっていることに気付ける場合がほとんどです。気づくのが遅れても酸素化をモニターでチェックしていれば人工呼吸を開始することもできます。これは想像ですが、周りに熟練のスタッフがいなかった可能性が考えられます。

硬膜外麻酔に失敗したというだけなら熟練の麻酔科医でもあり得ることです。合併症に対する対応が全くできていなかったことが今回の事故につながっています。

 

麻酔科医を用意しなかったこと

硬膜外麻酔に失敗したこと

合併症に対する対応ができなかったこと

 

これらが事故の原因であり、無痛分娩自体が危険という考え方は間違っています。

もう一歩踏み込んで考える

無痛分娩が流行らないのは、そもそも産婦人科医と麻酔科医が全然足りていないことが問題です。

産婦人科はなり手が少なく、全然足りません。定年で辞められてしまっては医療が成り立ちません。

麻酔科医は圧倒的に足りなかったのがようやく普通の手術は麻酔科医が麻酔をすることが増えたという段階です。今でも地方では不足しており、外科医が麻酔科を兼務することもあります。

 

「各地域に産科の大きい病院を準備して麻酔科医を24時間体制でお産に対応させる」というステップに進むにはマンパワーが不足しています。

医師数が欧米並みになれば、無痛分娩が標準になる時代が来るかもしれません。

たぬきの考えとまとめ

無痛分娩は安全性に気を付けて行えば決して危険な方法ではありません。合併症が起こることがあるのは通常の出産でも同じです。都会なら先端医療を志すハイレベルな産科病院での無痛分娩を受けることもできるでしょう。

ただし安全性に欠けた病院で出産するのは危険です。

出産は人生の大きなイベントですので、いくつかの候補を選び、周りと相談しながら病院選びをするのがいいでしょうね。